NovelRecital(ノベルリサイタル)は、小説家たちが“自分の作品を自ら朗読・販売”するハイブリッド・イベントです。
小説家・藤谷治氏のnote「小説の朗読・販売イベントは必要だ!」という呼びかけにHON.jpが呼応し具現化いたしました。
記念すべき第1回は「朗読フェスティバル」と銘打ち、世田谷文学館との共催で実施いたします。
なぜ朗読・販売なのか?
2026年7月27日 NPO法人HON.jp 理事長 鷹野凌
音楽CDや書籍などの物理メディアを販売するビジネスは、毎年のように前年割れしています。それに対し、音楽コンサートのような“体験”を提供する分野は飛躍的な成長を遂げています。では「出版にとってのライブ」とはなにか? そんなことを私は10年ほど前から考え、実践してきました。
HON.jpでは2017年から「NovelJam」という出版創作イベントを開催しています。ゼロから小説を書いて編集・校正して表紙を付け書籍として制作し販売するまでのプロセスを数日で“体験”するイベントです。「出版にとってのライブ」とはなにか? の答えのひとつだと私は考えています。
そのいっぽうで、出版記念パーティー、講演会、セミナー、交流会、サイン会、トークショーなども「出版にとってのライブ」だとは思いますが、当意即妙な受け答えといった、ある種の瞬発力が要求されます。熟考して伝える言葉を選び、文章として表現することを生業とする文筆業とは、相性が悪い場合も少なくありません。私も正直、アドリブは苦手です。
では朗読会はどうでしょう? これもまた「出版にとってのライブ」です。朗読に瞬発力は必要ありません。トークが苦手な人でも可能でしょう。朗読のプロには敵わないかもしれませんが、自分で書いた文章を朗読するなら他の誰よりもその文章について知っています。小説であればその作品世界を誰よりも熟知しています。
そして、海外では作家自身による朗読会が盛んに行われていると聞きます。ところが『BUTTER』の柚木麻子氏は海外で「どうして朗読会をやらないの? 作家は書き下ろしを書いている間、だいたい朗読会でお金を稼ぐし、アサコならいっぱい人が来るでしょう?」と言われ、「そんな世界線日本にはありません」と答えたそうです。
なんて寂しいことでしょうか。確かに、日本では作家自身による朗読会というのを、あまり見聞きしたことがありません(俳優や声優による朗読会はありますが)。そういう文化がまだ根付いていない現状で、朗読会だけを単独で開催しても人が集まらないかもしれません。
しかし、作家が自作を手売りする同人誌即売会は、「コミックマーケット」や「コミティア」はもちろん、文章を主体とした作品が中心の「文学フリマ」なども盛況です。これもまた、単に本を売る場としてだけでなく、読者が作家と直接会って話ができる機会という“体験”を提供している「出版にとってのライブ」です。
ではその即売会と朗読会をいっしょにやってみてはどうでしょう?
藤谷治氏がnoteに書かれたように、詩や短歌の朗読・販売会はすでに盛んに行われているそうです。ならば、小説の朗読・販売会も、それなりに受け入れられるのではないでしょうか? どちらも「出版にとってのライブ」です。掛け合わせも悪くないと感じました。
なにより作家の側からそういう場が必要だ! という声が挙がったことが素晴らしい。藤谷治氏のnoteを読んで、私はすぐに「運営側でお手伝いできたらと思います」とコメントを書き込んでいました。やってやろうじゃないの!
ただし、即売会にせよ朗読会にせよ、その“体験”に希少性があるいっぽうで、時間と距離の壁も存在します。私が以前書いたコラム「出版にとってのライブとは?」に対し、京都在住の倉下忠憲氏から「(リアル重視の考え方は)人口の多い都市部に住んでいる人だけにしか使えない(あるいは使いにくい)という点は考慮すべき」という反応がありました。端的に言えば「遠いところで開催されたら行けないじゃん!」という話です。
それゆえ今回のこの企画では、YouTubeでライブ配信するハイブリッド・イベントにすることにもこだわりました。現地参加は希少性が高いから有料だけど、配信は希少性が低いから無料にする。そういう考え方に基づき、NovelRecitalは開催されます。
1回だけの開催で終わらせないつもりで、ドメインも取得しました。願わくば、これをきっかけとして小説の朗読即売会が日本でも流行りますように。

